成年後見制度とは

 成年後見制度(せいねんこうけんせいど)ってご存知ですか?

非常に大雑把に言いますと、認知症などにより物事を判断できなくなった方に、家庭裁判所が選任した後見人がつき、本人に代わって預貯金などの管理や入院などの手続きをする制度です。

 物事を判断できる能力の程度によって、保佐人(ほさにん)、補助人(ほじょにん)と呼び方が変わります。

 事例等も交えて見てみましょう。

成年後見人の家庭裁判所での手続きについて

成年後見人の本人死亡後における死後事務について

成年後見人の本人死亡直後から弔いまでの対応について(死後事務)

成年後見制度について

 法定後見制度

 成年後見制度の仕組みを確認しておきましょう。

 

成年後見制度には「法定後見制度」「任意後見制度」があります。

 法定後見制度とは、本人または4親等内の親族(甥や姪まで)等の申立てにより、家庭裁判所が職権で「*成年後見人等」を選任する等して、判断能力が不十分な状態にある人を支援する制度です。

 

 *成年後見人等には3類型あり、本人の判断能力に応じて「成年後見人」「保佐人」「補助人」のいずれかが選任されます。

1.「成年後見人」は、精神上の障害の程度が著しく、判断能力が欠けているのが通常の(しっかりしている時がない)人のために選任されます。

2.「保佐人」は、精神上の障害により判断能力が著しく不十分な(しっかりしている時もある)人のために選任されます。

3.「補助人」は、精神上の障害により判断能力が不十分な(少し物忘れが出てきたかなと思う時がある)人のために選任されます。

 法定後見制度の中に、上記の3類型があることをご紹介しました。

 

 では、それぞれの違いについてお話ししたいと思います。

 

1.「成年後見人」が選任された場合、その本人を「成年後見人」といいます。

 成年被後見人は、日用品の購入や日常生活に関する行為は自分でできますが、それ以外の行為は成年後見人が法定代理人として行うことになります。
(成年被後見人が単独で行った法律行為は、原則取消すことができます。)

 ただし、成年後見人は何でも独断で本人の代理行為をできるわけではありません。
本人が居住していた家を売却したり、賃貸借契約を解除する等の処分行為には家庭裁判所の許可が必要です。

 また、本人の資産が多い場合や、親族間に紛争がある場合等には「成年後見監督人」が選任され、成年後見人の業務を監督するケースもあります。 

 

2.「保佐人」が選任された場合、その本人を保佐人」といいます。

 被保佐人は、民法(第13条1項各号)で定められた一定の行為(たとえば、借財または保証をする行為等)及び、家庭裁判所の審判で定められた行為をする場合には、保佐人の同意を要します

保佐人は、その同意なくしてなされた行為の取り消しをすることができます

また、家庭裁判所で定められた場合には、その定められた範囲内での代理権を有します

 

3.「補助人」が選任された場合、その本人を補助人」といいます。

 被補助人は、民法(第13条第1項各号)で定められた一定の行為(たとえば、借財または保証をする行為等)の範囲内で、家庭裁判所の審判で定められた行為をする場合には、補助人の同意を要します

補助人は、その同意なくしてなされた行為の取り消しをすることができます

また、家庭裁判所で定められた場合には、その定められた範囲内での代理権を有します

 

 少し難しいですか?

また事例に戻りますので、しばしお付き合いくださいませ。

 

 

成年後見人の家庭裁判所での手続きについて

 任意後見制度

「任意後見制度」とは、自分の判断能力があるときに将来に備えて予め自分で契約して任意後見人を選任しておく制度です。

 

 そして将来、自分が精神上の障害により判断能力が衰えた時に、予め自分で契約していていた内容で、任意後見人が生活や療養監護、財産管理を始めてくれるという内容です。

 

 自分がお願いした後見人に、自分が希望した内容で依頼できることから、「本人の意思の尊重を重視した制度」であると言えます。 

 

 選任手続の順序としては

①元気な時に任意後見契約をする(必ず*公正証書で)
        ↓
②(将来)判断能力が衰えてきた。
        ↓
③本人、任意後見契約受任者等が家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立てる。
        ↓
④任意後見監督人が選任されると同時に、予めお願いしていた人が「任意後見人」に就任する。

*(注)公正証書とは、公証人が関与して作成する、非常に証明力の高い書類のことです。

 

 こうして、任意後見人は、家庭裁判所で選任された任意後見監督人に監督されながら、本人の身上保護・財産管理業務を行います。

 

 何事も自分で準備することから、

「転ばぬ先の杖」の制度とお考え下さい。

成年後見人の財産管理業務について

 成年後見人は、成年被後見人(本人)の財産に関する法律行為について、包括的に代理権があり、成年被後見人の財産の管理権限があります(民法859条)。

 

 つまり成年後見人は、財産に関する法律行為に関しては、本人のためにほぼ全てのことが代理できるということです(保佐人、補助人は代理権目録に記載の行為に限ります。)。

 

 そこで、成年後見人個人の財産と成年被後見人の財産が混同してしまわないように、厳格な注意義務が課されています

例えば預貯金については、「〇〇〇〇 成年後見人 川上信哉」という口座名に変更して管理します。

不動産の管理もしますが、居住用の不動産を処分(売買や借家の賃貸借契約の解除等)する場合には、必ず家庭裁判所の許可が必要です。

 また、日々の収支を出納帳を作成して管理することはもちろん、生活費に困らないように今後の収支計画もします。

必要な行政等からの支援は全て申請し、どうしても生活費が足りない場合には生活保護申請を行って、本人の生活維持に努めます。

 

 もちろん、成年後見人の業務内容は家庭裁判所に監督されます

親族が成年後見人の場合には、司法書士や弁護士等が「成年後見監督人」に就任して、親族後見人の業務を監督することもあります。

(成年後見人の業務報告については、改めてご案内します。)

 

 たとえ親族が成年後見人であったとしても、万が一にでも不正があった場合には、刑法(第253条)の「業務上横領罪」に問われます(10年以下の懲役)。

残念ながら、成年後見業務に関する不正事件の95パーセント以上は、親族後見人によるものです。

そしてその原因は、「成年後見制度をよく理解していなかったことによる」のです。

 

 今後のみなさまに必要な知識ですから、ぜひ学びましょう。

 

 

成年後見人の財産管理業務と空き家空き地問題について

成年後見人の家庭裁判所での手続きについて

成年後見人の金融機関での手続きについて

  金融機関での成年後見制度利用の登録手続き

 成年後見人に選任されて直後に始める作業の1つとして、金融機関での「成年後見人の登録手続き」があります。

それは「財産管理」という業務内容に該当します。

 実は、その「成年後見人の登録手続き」が大変なのです。

金融機関窓口の担当者の力量で大きく変わるのですが、1時間から2時間は窓口で待たなければなりません。

さらに、金融機関によって必要書類までも異なります。

 京都府北部で多く利用されている金融機関は4つ(京都北都信用金庫、京都農業協同組合、京都銀行、ゆうちょ銀行)ありますが、

京都北都信用金庫と京都農業協同組合では、当初の口座を開設した支店まで行って手続するように言われます(支店ごとに登録が必要という意味)。

 一般的に京都府北部の金融機関で求められる書類等としては、

1.成年被後見人の本人が確認できる書類
2.成年後見人の本人が確認できる書類
3.成年後見人の選任について家庭裁判所の審判が確定したことを証する書類
4.本人が作っていた通帳
5.新しい届出印
等です。

その上で、各金融機関独自の成年後見制度に関する届出書類に記載し、提出します。

 ちなみに、京都府北部で突出して厳格な取り扱いを求めるのが、京都北都信用金庫です。

上記の必要書類等プラス、本人の届出印及び、成年後見人の個人実印と印鑑証明書の提出を求められます。

なお、成年後見人個人が京都北都信用金庫に口座を持っている場合には、成年後見人自身の個人口座に届け出た印鑑を成年後見人の登録手続きで押印する必要があります。

 次にご参考までに、

<後日、本人が施設に入所する等して住所変更した場合の手続き>では、

京都銀行では何らの手続きも要しません(既に成年後見人の登録が済んでいるからです)。

京都北都信用金庫は、最初に成年後見人の登録手続きをしたときとまったく同じ手続き(登録のし直し)をしなければなりません。

 成年後見人の登録手続きの仕方一つを見ても、その金融機関の「成年後見制度に対する考え方」が分かりますね。

さてみなさまは、どんな対応の金融機関が一番、成年後見制度を理解していると思いますか?

 私見としては、

日本全国の金融機関で手続きの方法が統一されたなら、
成年後見人はもちろん、金融機関の負担も軽減されて、
制度の普及にもつながると思うのですが…

いかがでしょうか。

成年後見人の家庭裁判所での手続きについて

成年後見人の本人死亡後における死後事務について

成年後見人の金融機関での手続きについて 2

  金融機関の対応の違い

 前回は金融機関での「成年後見人の登録」が大変なんですよ、というお話をしました。

では、成年後見人であることの登録をした「後の」、各金融機関の対応についてはどうなのでしょうか?

金融機関は前回と同じ、「京都北都信用金庫」「京都農業協同組合」「京都銀行」「ゆうちょ銀行」で比較してみます。

 Aさんの保佐人として、私が就任した場合でご紹介しますね。

①預貯金通帳の記載名はどうなるか?
②キャッシュカードの記載名はどうなるか?
③振込先や引き落とし口座として記載する場合はどう表記するか?

1.京都北都信用金庫
 ①Aのままだが 手書きで「保佐人川上信哉」と追記される。
 ②A
 ③A 又は A保佐人川上信哉 のどちらでも良い。

2.京都農業協同組合
 ①A(保佐人の表記は全くされない)
 ②カワカミシンヤ(本人の名前は記載されない)
 ③A

3.京都銀行
 ①A保佐代理人川上信哉(本人の通帳は繰越され、新しい通帳が作られる。)
 ②Aホサダイリニンカワカミシンヤ
 ③A保佐代理人川上信哉

4.ゆうちょ銀行
 ①Aのままだが 手書きで「(代理権付)保佐人川上信哉」と追記される。
 ②代 カワカミシンヤ
 ③A(代理権付き)保佐人川上信哉

 何で金融機関毎にこんなに違うんでしょうね?

もちろん覚えられません。

こういったマイナールールが、制度の普及に支障を及ぼしているように感じます。

日本全国で統一して欲しいと思います。

成年後見人の家庭裁判所での手続きについて

成年後見制度における不正防止策と業務報告

 成年後見人の「不正事件」がおこる理由に関してもお伝えしました。

 残念ながら、成年後見業務に関する不正事件の95パーセント以上は、親族後見人によるものであって、その原因は、「成年後見制度をよく理解していなかったことによる」という事でしたね。

 つまり例えば、子が親の成年後見人に就任した場合に、「親の金を子が使って何が悪い」という考えでの横領がほとんどなのです。

 たとえ親族が成年後見人であったとしても、万が一にでも不正があった場合には、刑法(第253条)の「業務上横領罪」に問われます(10年以下の懲役)。

 

 成年後見人は、成年被後見人(本人)の財産に関する法律行為について、包括的に代理権があり、成年被後見人の財産の管理権限があります(民法859条)。

このような大きな権限を持つからには、成年後見人は当然に様々な義務を負います。

その一つが「業務報告義務」です。

 成年後見人は 原則年1回、家庭裁判所へ業務報告を行わなければいけません。

報告書の様式は裁判所が指定しています。

https://www.courts.go.jp/…/koukennintou…/Vcms4_00000336.html
裁判所ホームページ

 

 報告内容は、財産管理と身上保護全般に及びます。

「財産管理」に関しては、1年分の収支報告と今後の収支予定報告等があります。

「身上保護」に関しては、本人の生活状況や健康状態の報告、そして今後必要な対応(たとえば、施設への入所が必要な状態であるとか)等について報告します。

その他、裁判所へ伝えておきたいこと、指導してほしいことなど報告します。

 添付資料は、報告期間の通帳のコピー全て、領収書のコピー(大きな出金の場合)、施設へ入所した場合は契約書のコピー等、様々あります。

 

 そして、司法書士が成年後見人の場合は、家庭裁判所への報告に加えて、リーガルサポート(公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート)への報告も行います。

https://www.legal-support.or.jp/
(公社)成年後見センター・リーガルサポート

 リーガルサポートへの報告は、原則6か月に1回ですから、司法書士は家庭裁判所への報告を合わせると年に3回以上の業務報告を行って監査を受けています。

司法書士は、このような厳格な不正防止策を施して成年後見業務に臨んでいます。

 

 親族後見人の方も大変だという事は存じ上げております。

アドバイスが必要であれば、ご相談ください。

 

 成年後見制度は、みなさまに絶対に必要となる知識ですから、ぜひ学んでください。

 

成年後見人の家庭裁判所での手続きについて

成年後見人が行う「身上保護」とは

 「〇〇がないので買ってきてください。」

施設や病院の方から、成年後見人がよく言われることなのですが・・・。

 成年後見人が行う身上保護とは「法律行為」であって、「事実行為」は含まれません。

 つまり

本人の買い物をしたり料理を作ってあげたり、病院への付き添いをすることではありません。

⭕️本人の買い物をしたり料理を作ってくれたり、病院への付き添いをしてくれるヘルパーさんと「契約をすること」が成年後見人の仕事です。

 しかし実際はそうも言ってられない場面も多いのです。

本人の収入、預貯金が少なくて、出費を抑えなければならない場合がその典型です。

ヘルパーさんにお願いするお金がないのです。

 当職も、入院した本人(女性)の肌着等を準備する必要があり、女性下着売り場に人生初潜入しました。

サイズの確認や本人の趣味を考えながら、商品を手に取って吟味していたので、10分くらいはその場にいたと思います。

男性が女性下着売り場にいるときは、「何か事情がおありだな」と思ってあげてください。

 この話をすると「成年後見人がそんなことまでしてはいけない!」と非難する方がいます。

では、お聞きします。

「他に誰が、してくれるのですか?」

 言われる通り、一部の人の善意に頼る仕組みでは、その方々が倒れたら破綻してしまいます。

 この現場の状況が一刻も早く改善されますように、

市町村には一刻も早く「成年後見制度利用促進法」に則って「地域連携ネットワーク」作りに着手して頂きたく、切にお願い申し上げるのです。

成年後見人の家庭裁判所での手続きについて

成年後見人が行う「身上保護」とは 2

 本人の健康について

 施設に入所している方の食欲がなくなって困っていました。

あまりに食べないので、病院で点滴を打ったり、イノラスという高栄養ドリンクでしのぐ日々でした。

 

 ある日、その方の好物が「せんべい」だったことを思い出し、(施設の許可を得て)せんべいを差し入れしたところ、私の目の前で3枚も食べました。

その日から、施設でもせんべいを出していただきました。

 

 数日後、施設に様子を確認すると、せんべいは食べるけど、ご飯は食べないとのこと。

以前、施設の職員さんが「年越しそばとか ちらし寿司とか、いつもと違うものがお好きみたいです。」とおっしゃったのを思い出しました。

そこで、ご飯にかける「ふりかけ」を購入しました。

あえて食事の時間に訪問し、ご飯に「ふりかけ」をかけてみました。

・・・が、本人は関心を示さず(ふりかけという食材を初めて知ったようです)、私はがっかりして帰りました。

 

 それが昨年秋の話です。

 今ではふりかけがお気に入りで、食事の8割以上を食べ、日によっては完食するようになったとのことです。

 

 今日、施設から「ふりかけとせんべいがないので買ってきてください。」
「ふりかけは梅がなくなりました。」
「最近はおにぎりせんべいがお気に入りのようです。」とお電話を頂きました。

 私は、本人の食欲が回復して、後見人冥利に尽きると喜んでいます。

 

 そこで、成年後見人の業務内容についてのおさらいです。

成年後見人が行う身上保護とは「法律行為」であって「事実行為」は含まれません

 

つまり

本人の買い物をすることではありません。

本人の買い物をしてくれるヘルパーさんと「契約をすること」が成年後見人の仕事です。

 

 施設の生活品購入サービスを利用しようかとも思いましたが、近隣の施設であり、本人の様子をお知らせいただける良い機会にもなっていますので、

今回も、私が選んだ「ふりかけ」と「せんべい」を届けようと思います。 

成年後見人の家庭裁判所での手続きについて

成年後見人のある日の出来事 ~身上保護業務について~

 ご紹介するのは、成年被後見人の方が転院した日のことです。

 朝9時に今の入院先の病院へ行き、荷物をまとめました。

私は自分の車で、本人は介護タクシーに乗り転院先の病院へ向かいました。

転院先の病院では診察に付き添いました。

手続きを終えて、私が転院先の病院を出たのは夕方の4時でした。

久しぶりに車の運転中に足がつりました(朝から水分をとらず食事をとらずだとこうなるのですね。)

 入院の申込みでは(予想通り)、窓口の方に「親族の署名欄が空欄だ」という事と、当職に「連帯保証人になるように」と求められました(なお、親族は誰も協力してくれません)。

専門職成年後見人が連帯保証人になれない理由(利益相反行為となるから)を実に丁寧に説明したところ、10分くらいして上司の方が現れたので、また同じ説明を申し上げました。

この病院はご理解が早く、連帯保証人なしでの入院をご了解いただきました。

 その後、生活相談員との面談で「身元引受」に関しての同意書への署名を求められました。

私は「身元引受」の内容が、本人死亡時の遺体の引き取りに関することのみである事、そして医療同意を求めていないという事を確認して署名しました。

成年後見人には医療同意権はないのです。遺体の引き取り等の死後事務についても成年後見人の業務ではありません。ただ、遺体の引き取りは、親族が誰も対応しない場合、(義務はありませんが誰もしないので)成年後見人がするしかないのが実情です。

 なぜ私が頑張って、病院に成年後見業務を説明して交渉するのか。

それは、今後の成年後見人の業務に寄与する為(将来の成年後見人が無駄な労力と時間を使わなくていいように)と、もちろん本人の権利保護のためです。

 成年後見制度を理解していないことが理由で、意味のないことを強要をされることがあります。 

 例えば・・・

 家庭裁判所で選任された成年後見人が入院契約書に署名押印しているのに、(契約の内容を理解できない)本人の「はんこ」を押さなければならない、という「市町村」や「病院」や「介護施設」のそんな対応の理由が、私には良く分かりません。

成年「被」後見人(認知症が進んで契約の内容が理解できない本人)の「はんこ」を押させる理由が分かる方は是非教えてください。

 「市町村」「病院」「介護施設」においてしかるべき立場にある方は、成年後見制度を勉強することは、もはや「職務上の責任」だと思います。

もちろん「市町村」は成年後見制度利用促進法という法律で定められた義務があるのですから、直ちに職責を履行して頂きたいと思います。

成年後見人の家庭裁判所での手続きについて

成年後見人の本人死亡後における死後事務について

成年後見人の本人死亡直後から弔いまでの対応について(死後事務)

任意後見制度と家族信託の併用について

事例

 相談者Xの妻は既に死亡し、実子Yは知的障碍者です。

XはZと再婚し、仲睦まじく生活しています。

なお、Zには連れ子のBがいますが、Bは既に独立しています。

 Xの資産は自宅と預金1,000万円です。

XはZと余生を過ごしたいと思っていますが、Zに財産管理をさせるつもりはなく、遺産はYに承継させたいと考えています。


 Xは、信頼できる甥Aと任意後見契約をして任せようと思っていますが、それだけでXの思いは実現できるでしょうか?

 

検討

 1.成年後見制度は本人の意思能力が衰えた時に、本人の財産管理と身上保護を行う制度です。
本人の「全財産を」管理し、「本人のために」利用することになります。

 つまり、成年後見制度では財産を本人以外の親族等のために使うことが、原則できなくなります。

 2.一方 家族信託は、予め信託した特定の財産を(全財産ではない)、信託目的に従って利用するものです。
よって、(妻Zの存命中はZが自宅を利用してください等)家族のために使うことも可能です。

 しかし、成年後見制度ならできる身上保護(本人の入院契約や、施設入所契約等、身の回りの契約等)はできません。

 

 そこで、家族信託と任意後見契約を両方利用することにより、両制度の利点を活用できるのです。

 

本ケースですと、

①Xは甥Aを受託者とする信託契約をし、自分Xと妻Zが生きている間は自宅はXとZが使うけれども、二人とも死んだあとは実子Yの物にすることができます。

現金の一部を信託し、Yの療養看護費用に必要な支払いに充ててもらうことができます。

 

②Xは甥Aと任意後見契約をし、Xが認知症により施設などへの入所が必要になった時の対応をお願いできます。
①で信託した以外の全財産は、Xの療養看護費用等、存命中はXのためだけに使用されます。

 

「家族難民」「パラサイト・シングル」等と称される「無縁社会」が訪れました。
既に生じている深刻な問題に対応しなければなりません。

 

 家族信託、成年後見制度、遺言、死後事務委任契約の4制度を駆使した終活を必要とする時代が到来しています。

 

 

家族信託(民事信託)について

遺言にまつわるエトセトラ

成年後見人の本人死亡直後から弔いまでの対応について(死後事務)

身寄りがない人の入院 及び
医療に係る意思決定が困難な人への支援について

 入院する時に連帯保証人や身元引受人を求められますね?

手術等、医療を受けるときに医療同意を求められますね?

 

 では、連帯保証人や身元引受人を準備できない人は入院できないのでしょうか?


認知症等の精神障害で医師の説明が理解できない人は、医療を受けることができないのでしょうか?

 

 医療の窓口では、急病の身寄りのない本人に付き添ったケアマネジャーや成年後見人に、連帯保証や身元引受や医療同意に関する書類にサインを強要しています

もちろん、ケアマネジャーや成年後見人には、連帯保証や身元引受や医療同意をする義務はもちろん、権限すらありません

 

 私が入院中の本人の成年後見人に就任したケースでは、就任の挨拶に病院を訪問したところ、いきなり「延命措置をしない旨の同意書」その他にサインを求められました(まだ本人の病状はおろか、何故ここに入院しているのかすら聞いていないのに!)。

 

 これからは確実に、今以上に、単身世帯や頼れる親族がいない人が増加します。

そんな「孤立社会」が進行する中、上記のような医療機関の頑なな対応は、深刻な問題となっています。
医療が必要な人に、医療が施されないことを正当化できると考えているからです。

 

 そんな窮状に付け込み、とうとう、施設入所や入院に際して「高額で」身元保証等を引き受ける業者も出てきました。

 

 なお、老人介護施設などでは「身元引受人がいないこと」を理由として受け入れを拒否してはいけないという厚生労働省の通達があります。

 

 さて、医療機関向けにもガイドラインが出ています。

タイトルは「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」です。

 

 医療機関には、早急に対応を改善して頂くことを願います。

 

成年後見人の本人死亡後における死後事務について

成年後見人の家庭裁判所での手続きについて

地域連携ネットワーク

 成年後見制度利用促進基本計画(以下「利用促進計画」)のポイントの一つに、「地域連携ネットワークづくり」があります。

 利用促進計画は、平成29年3月に閣議決定され、市町村に対して5年間のタイムスケジュールが提示されたものです。

 あなたの住む町での進捗状況はいかがですか?

 地域連携ネットワークのイメージでは、本人に成年後見人が就任すると、すでに本人を援助している関係者の中に成年後見人が追加される体制になります(本人の援助者が一人増えるということです)。

現状はどうでしょうか?

成年後見人が就任すると市町村の担当者も「ヤレヤレ」といった感じで、本人から完全に手を引いてしまいませんか?(法は市町村のこの態度に問題があるとしているわけです。)

そして、本人と初めて会うことになる成年後見人は、本人に関する情報が少なすぎて、初動から悪戦苦闘を強いられるのです。

本人の利益保護というにはほど遠い現状です。

 法で定められた地域連携ネットワークはイメージ図の通り、認知症高齢者や障害者と後見人等を介護事業者、医療機関、ケアマネジャー等が見守るチームを核とします。

そのチームを家庭裁判所や金融機関、社会福祉協議会、自治会、各種専門家団体で構成する「協議会」がサポートします。

そしてその協議会は、市町村が直営又は委託して設置した「中核機関」が司令塔となり、地域が連携して本人を守る仕組みです。

 では、あなたの住む町では、利用促進計画に定められている「パンフレット、ポスターなどによる制度周知」はなされていますか?
(言い換えると、「あなたは市町村が行う、成年後見制度の広告を見たことがありますか?」ということです。)

 ある市議会で成年後見制度利用促進法の履行がされていないのではないか?と質問され、市の福祉担当者が「成年後見制度はあまり利用されていないから・・・」などと答弁したのは本末転倒の話でした。

つまり、利用者が少ないから法を履行しないのだという答弁内容でしたが、発想がおかしいですね。

 また、福祉を唱える市町村議員の皆様は、その選挙区で成年後見制度のパイオニアになってください。

でなければこの数年先の、選挙区民の福祉を本当に叶えることはできないのではないでしょうか。

https://www.mhlw.go.jp/…/06-Seisakujouhou…/keikaku-green.pdf
成年後見制度利用促進計画について(厚生労働省)

 

成年後見人の家庭裁判所での手続きについて

成年後見人の財産管理業務と空き家空き地問題について

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