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令和元年7月1日施行された改正民法(民法第622条の2第1項)において、「敷金」について、具体的な定義付けがなされました。
(それだけ「敷金」についてのトラブルがたくさん発生していたということですね。)
条文では難しく書かれていますが、要は、どんな名目であっても、賃貸借契約によって発生した借主の貸主に対する債務を担保するために預けたお金は「敷金」であるとご理解くださいという意味です。
敷金に関するトラブルの代表的な事例の一つをご紹介すると、賃貸住宅を退去する際に、「預けた敷金以上の原状回復費用の請求をされた」というものがあります。
それは、
契約書に書いてある「原状回復」とは、借りた時と同じ状態に戻して貸主に返すことだと家主が主張して、退去時に居室の改修工事費用全額を請求し、預り敷金を全額没収した上で、さらに追い金で数万円から数十万円の「原状回復費用」という名目の費用を請求することが常態化したことによるトラブルです。
この状況に関して、たくさんの裁判がなされました。
現在は、退去時に借主にリフォーム費用を全額負担させるということが、「家主の不当利得である」ということは常識となっています。
次回は「原状回復とは何か?」について、ご紹介したいと思います。
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建物賃貸借契約書に書いてある「原状回復」とは、
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。
つまり、
賃借人が退去の際に負担すべき原状回復費用は、
賃借人が通常の利用方法を越えて建物を毀損した場合等(タバコ等のヤニ・臭い、壁等のくぎ穴・ネジ穴、落書き等の故意による毀損、等)の、その部分の修理費用に限られます。
*例えば壁の一部に落書きがあった場合、その部分のクロスの張り替え費用は賃借人の負担ですが、その張り替えにより「他の面」のクロスと色合いが変わったからといって全面張り替えた場合、その「他の面」の張り替え費用は賃貸人(家主)の負担です。
そして、そもそも家賃に含まれているので賃借人に請求できない費用として、
経年変化や通常損耗(日照による畳の変色・フローリングの色落ち、家具の設置による床やカーペットのへこみ、クロスの変色、等)があります。
なお、退去時に古くなった設備等を最新のものに取り替える等の「価値を増大させるような修繕等」のことを「グレードアップ」といいますが、
もちろん、グレードアップ部分は賃貸人(家主)の負担であり、賃借人には請求できないはずの費用です。
このように「原状回復」とは、借りた時と同じ状態に戻して賃貸人(家主)に返すことではありません。
ちなみに、多くのケアハウス(軽費老人ホーム)では、今でも、退去時の原状回復費用として、グレードアップ部分も含めたリホーム費用を、退去者(退去者の相続人又は保証人)に全額請求しています。
退去者(退去者の相続人又は保証人)は、(お世話になったという感謝の気持ちがあるので)全額支払っていらっしゃいますが、本当は違法なんですよ。
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