成年後見人の本人死亡直後から弔いまでの対応について(死後事務)

 成年後見人の本人死亡直後から弔いまでの対応について

 いきなり質問です。

親族ではない第三者が成年後見人、保佐人、補助人、任意後見人(以下、「成年後見人等」という)に就任している場合です。

 次のQ1~Q3に、イエスかノーでお答えください。

Q1 本人が死亡したとき、親族が対応しない場合は、成年後見人等には遺体を引き取る義務がある?

Q2 本人が死亡したとき、親族が対応しない場合は、成年後見人等には遺体を火葬する義務がある?

Q3 本人の遺体を火葬したとき、親族が対応しない場合は、成年後見人等は遺骨を墓地に納骨する義務がある?

 難しいですか?

 実は、福祉のベテランでも、医療のベテランでも、これを知らない人が結構いるのです。

問いの答えは全てノーです。

 

 成年後見人等は、親族、ケアマネジャー・福祉施設の生活相談員や職員、医師や病院の地域連携相談室等から間違った要求を受けることがあります。

その場合、適切に対応できるように知的武装しておかなければ、成年後見人は一人で全ての負担を抱え込んでしまうことになります。

成年後見人等は、本人死亡後に必要となる法律知識を持ち、本人の生前から「その時」に備えて、本人の関係者にレクチャーしておく必要性を強く感じます。

みなさんも一緒に学びましょう。

 成年後見人等は本人の死亡後に、その遺体の引取りの義務も、火葬をする義務も、納骨をする義務もないというお話をしました。

では、遺族と連絡を取ることが困難な場合や、遺族等が遺体の引取りを拒否する場合について、どんな法律があるのでしょう。

 

それは、

「墓地、埋葬等に関する法律(以下「墓地法」)第9条」に記載があります。

そこには、「埋葬や火葬を行う者がいない場合は、死亡地の市町村長がこれを行わなければならない」と書いてあります。

成年後見人等がいたとしても、成年後見人等が遺族でない限り、この法律が適用されます

 

 なお、成年被後見人等が生活保護利用者である場合の葬儀、火葬・埋葬の手配も、前掲の墓地法により市町村長が行うことになっています(生活保護法第4条第2項)。

また、市町村の措置により入所委託した施設等で成年被後見人、被保佐人、被補助人、任意後見利用者(以下、「成年被後見人等」という)が死亡した場合には、その葬祭を行う者がないときは、市町村はその葬祭を行い、又はその施設に葬祭を委託する措置を採ることができます(老人福祉法第11条)。

その他は、行旅病人及行旅死亡人取扱法による「行旅中死亡シ引取者ナキ者」「住所、居所若ハ氏名シレス且引取者ナキ死亡人」の遺体の引取りも市町村が行うことになっています。

 

 このような法律があるにもかかわらず、行旅死亡人について以外、行政はこれらの法律に従った対応をすることはまずありません。

 

 私が知ったあるケースでは、本人の配偶者が急死しましたが、本人は精神障害者であり対応は不可能でした。そして、遺体の引取り手が見つからないまま、警察署の霊安室で3か月間保管され、ようやく行政により火葬されたそうです。

私はその火葬の後に、本人の成年後見人に就任したのですが、最初の仕事は、その配偶者の死亡時の所持品を市役所から引き継ぐ事でした。

 行政が対応するとそんなにも時間がかかるからでしょうか、

成年後見人等が本人の遺体の引取りをすることを、関係者等は当然視しているのが現実です。

そんな福祉関係者と成年後見人(私)のやり取りをご紹介できたらと思います。

 

成年後見制度とは

 福祉や医療関係者の勘違い

 前回までに、成年被後見人等が死亡してその親族が遺体の引取り等を行わない場合、その火葬等は市町村長が行う旨、複数の法律で定められていることを学びました。

しかし、施設や病院等からは、成年後見人等が遺体を引き取り、火葬等を行うことが当然視されている現実があります。

既にご説明のとおり、成年後見人等には本人の死後事務を行う権利も義務もありません。

 

 では、成年後見人等は、法律上はどういう立場で死後事務に対応しているのでしょうか。

それは、「事務管理」(民法第697条)や「応急処分義務」(民法第874条、民法第654条)によって理論構成されていますが、実は非常に不安定な立場です。

そこで民法が改正され(「円滑化法」平成28年10月13日施行)、成年後見人は家庭裁判所の許可を得て、火葬をすることができるようになりましたが(民法873条の2)、これも義務ではありません。

さらに、円滑化法は成年後見人に関してのみの規定であり、保佐人・補助人・任意後見人は今までとおり、「事務管理」や「応急処分義務」として対応せざるを得ません。

 

*「事務管理」「応急処分義務」「円滑化法」についての説明はこちらをご覧ください。

https://www.kawakami-kyoto.com/15984386822372

(成年後見人の本人死亡後における死後事務について)

 

 施設や病院が成年後見人等をどういう視点でとらえているのか気になるところですが、次の二つの作業をするための出入り業者程度に勘違いしている職員がいることは確かでしょう。

1.料金の支払いをしてくれる人

2.本人の死亡後に遺体と荷物を搬出してくれる人

正しくは、成年後見人等の業務は「財産管理」と「身上保護」です。

 

*「財産管理」「身上保護」についての説明はこちらをご覧ください。

https://www.kawakami-kyoto.com/579227828

(成年後見制度とは)

 

 こんな事がありました。

ある施設のベテラン事務職員の話です。

その職員は成年後見人に相談することなく、別の事業所のサービスを利用するために、その職員の判断で、本人のために介護利用契約を締結し、施設預けの口座からその利用料を引落しするために、施設預けの印鑑を利用して金融機関と口座自動振替の契約を行いました。

そして一月後、自動振替申込用紙の記載に不備があり、サービス利用料の引落しができなかったことから、それらの契約がなされたことを、成年後見人は初めて知ることになりました。

成年後見人は、介護サービスの契約締結は、成年後見人の身上保護業務なのだと説明しました。

しかし、その職員は、事後の報告はしなかったがサービスの利用が必要であることは事前にFAXで伝えてある。それよりも口座引落しができなくて困っている等と述べ、悪びれる様子は全くありませんでした。

この時点ではまだ、成年後見人は仏の顔でいることができました。

しかし後日、本人の体調が悪化したため、本人が死亡した時の連絡方法など対応について、成年後見人が打合せを求めたところ、その職員からは「それは後見人の仕事だろ!」と居丈高にあしらわれた上、「葬儀屋と生前契約をしてください」等発言し、全く聞く耳を持たなかったため、苦情に発展しました。

成年後見人は施設に抗議し、さらに監督官庁に苦情申立を行いました。

 笑い話ではありません。

 

 

成年後見制度とは

本人死亡後のタイムチャート

 さて前回までに、成年後見人等は、本人の死亡後に遺体の引取り等をする権利も義務もないが、事務管理や応急処分義務の理論を駆使し、又は円滑化法を利用して対応していることをご紹介しました。

しかし、福祉関係者や医療関係者等からは、成年後見人等が遺体と荷物を搬出することが当然視され、又、成年後見人等はそれらの期待に応えている現実があることをお知らせしました。

 

 ではここからは、大まかな時系列に従い、親族が対応しないケースでの、本人死亡直後からの成年後見人等による弔いの対応手順と、関係する法律等を確認しましょう。

 

【大まかなタイムチャート】

1.本人が死亡する

 ↓

2.遺体の引取り

 ↓

3.親族への連絡・調整、葬儀社等との打合せ

 ↓

4.死亡届等

 ↓

5.火葬

 ↓

6.納骨

 

1.<本人が死亡する>

 本人が危篤状態、又は死亡していることが発見されると、成年後見人等に電話が入ります。

施設に入所している場合には、事前に対応方法を打合せしていますので、施設職員には、通常その打合せ通りの対応をしてもらいます。

(先にご紹介した施設職員は、この事前の打ち合わせを拒んだのです。)

私は、死亡が確認された場合には、深夜早朝には連絡をしていただかなくてよいと伝えています。

なぜならば、急いで駆け付けたところで、朝までは何もできることはなく、遺体のそばにいるだけだからです。

しかし、一部の病院からは深夜早朝お構いなしに「すぐに来てください」と連絡があります。

 

 成年後見人等は本人の記録を確認し、必要となる手続を確認し、予定のキャンセルや日程の調整をします。

 

(必要となる手続の参考)

 本人がアイバンク登録をしている場合、アイバンクの方からするとできるだけ早く連絡がほしいようです。

2度連絡したことがあるのですが、担当の方は、死因や病歴等の質問をして、「胸の上にはドライアイスを置かないでください」「遺体の瞼を閉じて湿らせたタオルを乗せておいてください」等、落ち着いた声で的確に指示を出してくれます。

そして、夜中でも、数時間後には宿直の医師を連れて現場に来られます。

 

 こうして成年後見人等による弔いが始まります。

次回は、2.<遺体の引取り>について学びましょう。

 

成年後見制度とは

 遺体の引取りについて

 2.<遺体の引取り>についてのお話です。

 死亡を診断した医師により、成年後見人等に死因について説明があり、死亡診断書(医師法第19条2項、医師法施行規則第20条)に記載する死因はその通りで良いかと確認されます。

通常、死亡診断書は死亡届(戸籍法第86条、第87条)と同一用紙でA3サイズのものが発行されますが、病院によってはA4サイズの死亡診断書だけが発行されることもあります。

 

 私が対応できず、施設の職員に、死亡診断書をもらってくるようにお願いしたことがあるのですが、その時は、病院から、遺体を搬出する人にしか渡せないと言われたため、葬儀社に受理してもらったことがあります。

 

死亡診断書は家庭裁判所への業務報告書にも添付しますし、除籍謄本が手配できるようになるまでは死亡の証明として使いますので、必ずコピーを取っておいてください。

 

 病院や施設は、本人が死亡すると、できるだけ早く遺体を搬出して欲しいと希望しています。

そこで、葬儀社に連絡し、遺体の搬出と、葬儀社での遺体の安置をお願いすることになります。

葬儀社によってそれぞれ対応(丁寧さ)が異なりますから、成年後見人等として仕事がしやすい業者を見つけておくと良いと思います。

私の場合は、同じ葬儀社に何度かお願いするうちに、成年後見業務特有の事情について理解してもらえるようになりました。

 

 余談ですが、ある大きな病院では、遺体を搬出する葬儀社についての指定がありました。

その病院指定の葬儀社は、成年後見人に対して、エンバーミング等、葬儀のオプションをしつこく提案したり、何度も電話してくるので辟易したことがあります。

 

 ところで、前回までにくどいくらい申しましたが、成年後見人等には、本人の葬儀をする権利も義務もありません。

遺体の搬出と火葬迄は、衛生上の理由がありますので、事務管理や応急処分義務として、または円滑化法を適用して、やむを得ず成年後見人等が行うことがありますが、いわゆる「葬式」はそのような理由もなく、成年後見人等の判断で行うべきではないとされています。

 

 多少本人の遺産があったとしても、その所有権は本人が死亡した瞬間に相続人に移転しています(民法第896条)。

たとえ、本人の死後対応に全く協力しない相続人達であったとしても、遺産はその相続人達のものなのです。

 

 ですから、世間で「直葬(ちょくそう)」とか「略式葬」と呼ばれる範囲が、成年後見人等の裁量の限界と理解していただいたら良いでしょう。

 

 資料として、死亡届と死亡診断書を添付しておきます。

 

成年後見制度とは

 親族への連絡・調整、葬儀社等との打合せについて

 3.<親族への連絡・調整、葬儀社等との打合せ>についてのお話です。

 

 本人が危篤又は死亡したとき、成年後見人等は「知れたる」親族等に連絡をします。

ここで、「知れたる」を強調したのは、成年後見人等は必ずしも、本人の生存中に全ての親族(相続人)等を把握しているわけではないからです。

(本人の生存中に、成年後見人等が相続人の確認を目的とした職権調査をすることはできません。)

 

本人の「その日」は必ず来るのですから、成年後見人等としては、知れたる親族等が遠方であったり、遠縁であったりしても、本人の生前には手紙や電話等して、できるだけ繋がりを保っておく方が良いと思います。

 

遺骨の引取り先を確認しておくことも忘れてはいけません。

 

なお、本人を虐待していたDV加害者等が親族等の場合には、ここで初めて連絡することもあります。

 

 成年後見人等が喪主として葬儀社と打合せをし、それら親族等の意向を確認しつつ、火葬の日程等を調整します。

成年後見人等からの電話に出てくれない人、急にあれこれ指示を出しだす人、本人に借金はあるのかと聞いてくる人、等、親族にもいろいろといらっしゃいます。

 

 墓地埋葬法第3条により、遺体は死後24時間以内の火葬が禁止されておりますので、火葬まで、遺体は葬儀社に安置させていただくことになります。

 

なお、感染症により死亡した人の遺体は、感染防止の観点から、24時間以内の火葬が可能です(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第30条3項)。

 

 ではここで、言葉の定義を確認しておきましょう。

1.埋葬・・・土葬すること

2.火葬・・・死体を焼骨にすること

3.焼骨・・・死体を火葬した結果として生じる遺骨

4.改葬・・・墳墓・納骨堂に埋蔵・収蔵された焼骨を他の墳墓・納骨堂に移すこと

5.墳墓・・・死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設

6.墓地・・・墳墓を設けるために、墓地として許可を受けた地域

7.納骨堂・・・他人の委託を受けて焼骨を収蔵するために、納骨堂として許可を受けた施設。

8.火葬場・・・火葬場として許可を受けた施設

以上、墓地埋葬法第2条(埋葬・火葬・改葬・墳墓・墓地・納骨堂・火葬場の定義)

 つまり、「遺骨を埋葬する」は法律用語としては誤りです。

 

成年後見制度とは

 死亡届等について

 4.<死亡届等>についてのお話です。

 

 本人が死亡した場合、届出義務者が死亡の事実を知った日から7日以内に死亡届をしなければなりません(戸籍法第86条1項)。

 

 そこで届出義務者は次の順序で死亡届をする義務があります(戸籍法第87条1項)。

①同居の親族

②その他の同居者

③家主、地主または家屋もしくは土地の管理人

その他、死亡届ができる者(届出権者)として、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人および任意後見人、任意後見受任者と定められています(戸籍法第87条2項)。

 よって、成年後見人等は成年被後見人等の死亡届をすることができるわけです。

(但し、本人の戸籍に死亡届出人として、届出した成年後見人等の氏名が記載されます。)

 

 死亡届の用紙につきましては、既に死亡診断書のところでご説明しましたが、死亡診断書と同一用紙でA3サイズになっているものを、死亡を診断した医師から受け取ることになります。

 

死亡届をする場所は、本人の本籍地または届出人の所在地(住所地)の市町村役場で行いますが(戸籍法第25条1項)、本人の死亡地でも可能です(戸籍法第88条1項)。

 

 昨年、事情があり、私は成年後見人として、本人の本籍地でも死亡地でもなく、届出人の住所地でもない京丹後市に死亡届出を行い、問題なく受理してもらいました。

もちろん、事前に京丹後市に問合せしてから手続に行きましたが、なぜ受付可能だったのでしょうね?(理由が未確認ですみません)

 ただし、急いで住民票除票の手配が必要な場合は、死亡した本人の住所地で死亡届をしてください。

そうすれば即日手配できます。

しかし、住所地以外で死亡届をすると、役場間の情報伝達作業が必要となりますので、住民票の除票を手配できるのは1~2週間後になってしまいます。

 

 死亡届の際に火葬の許可申請と火葬場の予約をします(墓地埋葬法第5条1項 2項、墓地埋葬法施行規則第1条)。

そして、火葬場使用許可書と死体埋火葬許可証を受けとります。

死亡届の際に、国民年金、健康保険や介護保険の手続き案内もしていただけますが、それらの手続き自体は後日でも大丈夫です。

 

 資料として、火葬場使用許可書と死体埋火葬許可証を添付しておきます(これらはA4サイズでそれぞれ別用紙です)。

 

成年後見制度とは

 火葬について

 5.<火葬>についてのお話です。

 

 先ず、今まで学んだことのおさらいをしましょう。

平成28年10月13日施行の円滑化法(民法第873条の2)により、成年後見人は家庭裁判所の許可を得て、死亡した成年被後見人の火葬・埋葬をすることができるようになりました。

これは成年後見人の権限として規定されたものであり、成年後見人に義務を負わせたものではありません。

そしてこの円滑化法は、成年後見人に関してのみの規定であり、保佐人、補助人、任意後見人には適用されないということは既にお話しした通りです。

また、墓地埋葬法第9条1項に「死体の埋葬または火葬を行う者がいないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない」と規定されており、たとえ成年後見人がいたとしても、この「死体の埋葬または火葬を行う者がいないとき」に該当することについても既述のとおりです。

以上を踏まえた上で、成年後見人等が火葬を行う場合のお話しに戻ります。

 

 関係者等との打ち合わせや事前の段取りは、前日までに済ませています。

そして、葬式は行いませんので、成年後見人等は、当日は火葬場へ直接行くことが多いと思います。

火葬許可証等は葬儀社に預けておき、遺体の搬送の時に火葬場に提出しておいてもらいます。

 ご参考までに、火葬場の使用料も市町村によって異なります。

例えば、

京丹後市の場合は15,000円ですが、霊柩車と待合室が無料で利用できます。そして、火葬にかかる時間は2時間程度です。

宮津市の場合は6,000円ですが、霊柩車も待合室もありません。そして、火葬にかかる時間は4時間程度です。

これらの料金や葬儀社への支払いは、死亡した本人の財産から支出させていただいております。

 

 ところで、本人の死亡後は預貯金口座が凍結されてしまいますが、前述の円滑化法により、成年後見人は家庭裁判所の許可を得て、その許可審判書を金融機関に提出することにより、預金の払い戻しをすることができます。

 

これも、成年後見人のみの規定であり、保佐人、補助人、任意後見人には適用されません。

 

実務では、本人が危篤の状態となった時点で、ある程度まとまった金額を払戻して、支払いに備えています。

しかし、突然死もありますから、その場合は、本人死亡後であっても、預貯金口座凍結前に払戻しすることもやむを得ないのではないでしょうか。

(注意)最小限の葬儀にかかる費用の払戻しと支払いまでは大丈夫のようですが、その他の支払いは、内容によっては相続財産の一部を処分したとして、相続の法定単純承認に該当し(民法第921条1号)、相続人が相続放棄できなくなる可能性があります(民法第919条1項)。

本人に多額の負債があるケースでは、特に成年後見人等が親族の場合に注意が必要です。

 

 葬式はしなくても、本人の親族や生前にお付き合いのあった方々には、成年後見人等から連絡をします。

前日に「自分たちは何の対応もしないから、そちらで勝手にやってくれ」と言っていた親族が、火葬場に現れることもあります。

 

成年後見人等によって考えは違うと思いますが、私は、棺に入れる花は葬儀社にお願いしています。

 

火葬後に、死体埋火葬許可証に火葬した旨の奥書証明がなされ、これが火葬証明書となります。
そして、火葬証明書を墓地管理者等に提出して納骨するという流れです。

 

 参考として、火葬証明書を添付しておきます。

 

 ところで、遺骨を引き取る親族がいない場合は、どうしたら良いと思いますか?

 

成年後見制度とは

成年後見人の家庭裁判所での手続きについて

 納骨について

 6.<納骨>について

 

 最初に納骨の意味を確認しましょう。

1.遺骨をお墓に納骨する=焼骨を埋蔵すること

2.遺骨を納骨堂に納骨する=焼骨を収蔵すること

埋葬は土葬の意味ですから、遺骨を埋葬するという使い方は誤りになるのでしたね。

 

 ところで、生活保護法にこんな条文があります。

(葬祭扶助)

第18条 葬祭扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。

一 検案

二 死体の運搬

三 火葬又は埋葬

四 納骨その他葬祭のために必要なもの

 

 第4号に「納骨」と明記してありますね。

しかし、ここでいう「納骨」とは「焼骨を骨壺に入れること」を意味するとされ、「焼骨を埋蔵」したり「焼骨を収蔵」する本来の意味での納骨費用は扶助して頂けないのです。

 

第3号で「埋葬」の費用は扶助するとしていますから、土葬するなら費用を出すが、火葬後の納骨の費用は出しませんよ、というおかしなことになります。

(生活保護法はこのような突っ込みどころ満載の法律です。)

 

第一、最低限度の生活費しか扶助されないのに、限界まで食費を削ったとしても、納骨費用(数十万円)を貯蓄できる生活保護利用者はまずいません。

さらには、自分のお墓を持っていたとしても、長年にわたり護持会費や管理料を滞納していますから、お寺に相談したとたんに、滞納している護持会費等の全額を請求されたという悲しい話もあります。

 

 さて、前回の<火葬>についてのお話の中で、「遺骨を引き取る親族がいない場合は、どうしたら良いと思いますか?」と言う質問をしました。

成年後見人等が収骨して永代供養して差し上げますか?

 

(公社)成年後見センター・リーガルサポート(以下「LS」といいます)の研修会では、できるだけ安価で引き受けてくれる寺院に納骨しましょう、と教える講師がほとんどだと思います。

しかし、上記の生活保護利用者やそれに準じる境界層措置を受けている成年被後見人等が死亡した場合、そんなお金も残りません。

 

実は、司法書士や弁護士等の専門職後見人の中には、納骨先がないために、事務所に骨壺を持ち帰って保管している人が結構いるのです。

 

以前、私はLSのメーリングリストで、この問題について質問したことがありますが、「間違いなく遺骨を引き取るという親族等がいない場合には、火葬場で収骨していない。」という回答も頂きました。

 

 なお、一度回収した遺骨を捨てた場合、刑法第190条の遺骨損壊罪、遺骨遺棄罪、又は自治体の散骨禁止条例、民法上の不法行為(民法第709条、第710条)等を構成し、又は該当する可能性があります。

ちなみに、遺骨の所有権は、慣習上定まった喪主に帰属するという説と、祭具に準じて祭祀主催者(民法第897条)が承継するという説があります。

 

 成年後見人等が喪主を務めても、その遺骨の所有権を取得することはないと思いますが、やはり行き先がないのは困りますよね。

成年後見人等の事務所に骨壺を並べることがトレンドとならないように祈ります。

そして、施設や病院の関係者には、成年後見制度を正しく知って頂くことを期待します。

 

 ここでは触れる時間がありませんでしたが、「死後事務委任契約」を締結し、自分の死亡後の葬儀や納骨等を第三者に委任する方もいらっしゃいます。

 

 成年後見人等の立場から、孤立社会・無縁社会の裏側をお伝えしました。

 

成年後見制度とは

成年後見人の家庭裁判所での手続きについて

当事務所の成年後見業務について説明しております。

当事務所の相続手続について説明しております。

当事務所の遺言書作成について説明しております。

お気軽にお問合せください

受付時間:9:00~17:30(土・日・祝を除く)